【SNSが炎上! 対処法は?】専門家に聞いた!「デマの拡散を防ぐ方法」はあるのか? #もやもや解決ゼミ

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(写真AC)もしあなたのフェイクニュースやデマ情報が拡散されたらどうしますか?

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インターネットが重要な社会インフラになっています。確かに便利で、瞬時に世界中に情報を発信できるようになりました。しかし、これも考えものです。いったん発信された情報は履歴に残り、消すことができません。そのため、最近ではフェイクニュースやデマ情報が拡散するという問題が起きています。

デマやフェイクニュースの拡散を防ぐことはできるのでしょうか。

インターネットの技術、ネット上のコミュニティー・コミュニケーションなどの専門家である武蔵大学社会学部の粉川一郎教授に「デマの拡散を防ぐ方法」について聞きました。

デマの拡散を防ぐ方法はない!

最初から残念な結論になってしまいますが、「事実に反すること」、フェイクニュースやデマが一度ネット上に書き込まれ、それが広まってしまうと対策はありません。

間違ったことが書き込まれた時点でいち早く、それは事実ではないと否定する情報を書き込んだとしても、拡散をある程度は抑えられるかもしれませんが抜本的な解決策にはなり得ません。

なぜかというと、現在ネット上のSNSなどは「面白いことを消費するためのプラットフォーム」になっており、書き込まれたことが事実であるのか、本当のことであるのかを問うてはいないからです。

「その事実でないこと」が面白ければ、「誰かを叩いたり、バッシングできたり、また自分が正義の側であると主張できたりする」とどんどん拡散していきます。これを止めることはできません。

「事実はこうです」と本当のことをネット上に発信したとしても、真偽をきちんと確認しようとする人は少数派なので、これは拡散されません。

ネットで話題になったことについてその真偽をきちんと確認しようとするファクトチェックの取り組みは国内外で広まっていますが、その対象となるのは一部の情報にすぎません。その結果、多くのケースで面白がられる「事実でないこと」の方が拡散し、真実が埋もれていくことになります。

ですので、デマ情報が流布されたら、それを否定することはもちろん重要ですが、「できることはない」というのが本当のところです。

逃げられるなら逃げてもいい

SNSで自分が炎上した場合も同じです。きちんと自分の意見を述べ、反論することは大事です。きちんと言った方がいい。しかし、それでも炎上します。

なぜかというと、多くの人は「あなたが本当に悪いかどうか」に興味がないからです。

その証拠に、炎上案件があった場合に「ところでどっちを叩けばいいの?」という発言をする人がいたりします。これこそ主張の中身について興味を持っていないという現れです。エンターテイメントとして扱っているに過ぎないのです。

SNSで炎上した場合には、「きちんと自分の意見を述べる」「間違っていたなら謝罪する」のは大事ですが、それでもどうにもなりません。

ですから、一個人の場合にはアカウントを削除して逃げるのも一つの方法です。自らをエンタメとして消費されたくない、と主張し行動してよいのです。

ただし、企業などの公式アカウントの場合、逃げたくても逃げられないことも あります。自分たちに非がある場合はとことん謝る必要があるでしょうが、自分たちの主張が正しいと考える際には、とことん自分たちの意見を貫くことも大切です。とりあえず何でもいいから謝っておいてやり過ごそう、という姿勢は、結果としてこうした炎上のエンタメ化を加速させることになります。

私たちは「エモクラシー」の時代に生きている

もともとインターネットはボランタリーなものでした。テクノロジーが時代を変革して、ネットワークが世界を変えると、初期のユーザーも、ネットワークを作り上げたエンジニアも高い志を持っていたのです。インターネットはそこに集うすべての人にとって有益な場になるはず、という信念のようなものがありました。

ところが、現在はどうなっているかというと、有益で本当に自分が探している情報にたどりつきにくくなっています。ここ5年、あるいは10年ほどで状況がとても悪くなっていると感じています。

ニーアル・ファーガソンは「エモクラシー」すなわち感情主義の時代だ、と指摘しています。現代社会では論理的な説明に耳を傾けることが軽視されているのです。

ネット上の情報は読ませるものから見せるものに変化し、さらに瞬間に感情を動かすものが求められるようになりました。初期のWebコンテンツやblogの長い文章から2ch(現5ch)などの短い文章に、それがTwitter(現X)の140文字になり、YouTubeからTikTokの短い動画へ、と求められるものが変化しています。どんどん消費するのにかかる時間が短くなっているのです。

つまり、その瞬間だけ人の感情を動かすものが求められており、それ以外のものは埋もれていっています。

現在ネット上で盛んに行われているコミュニケーションには、論理性が入る余地がないのです。感性だけで生きているような状態です。

私たちはインターネットを間違った方向に導いてしまったのかもしれません。「ネットはもうかる」というマネタイズの考えばかりが拡大していっています。

ボランタリーな文化の中で蓄積してきた良質なコンテンツは埋もれてしまい、次第に検索に引っかからなくなり、いずれはなくなってしまうことでしょう。私たちはもうインターネットに過度に期待するのはよした方がいいのでは?と考えたりします。


◇けつろん!

デマ情報がネット上に拡散したら、基本できることはないようです。デマを否定することは大事ですが、その効果は限られてしまいます。SNSで炎上したときも同じで、基本的に対策はありません。もし逃げられるなら、逃げるのも一つの方法です。

しかし、問題の本質はネットの利用の仕方にあります。粉川教授が指摘されているとおり、もはやネット上の情報は消費されるエンターテイメントとなっており、デマも炎上案件も、その中のコンテンツなのです。私たちは、ネットの利用法について再考しなければならないときにさしかかっているのかもしれません。

文:高橋モータース@dcp
編集:学生の窓口編集部

◇教えてくれた先生

粉川一郎

Profile

武蔵大学 社会学部長、教授。
筑波大学 大学院修士課程環境科学研究科修了。三重県生活部NPO室市民プロデューサー等を経て現職。藤沢市市民電子会議室に立ち上げより世話人として参加。現在は複数の自治体で社会的インパクト評価に取り組んでいる。『社会を変えるNPO評価-NPOの次のステップづくり』(北樹出版, 2011年)、『パブリックコミュニケーションの世界』(共編著,北樹出版, 2011年)、『東日本大震災とNPO・ボランティア: 市民の力はいかにして立ち現れたか』(共著, ミネルヴァ書房, 2013年)など著書多数。http://ichirok.akiba.coocan.jp/

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株式会社デジタル・コンテンツ・パブリッシング
編集プロダクション。コンテンツを制作する「よろず屋」です。取材をして原稿を書き、編集、校正を行って多くのWebメディアに納品しています。https://dcp.jp.net/

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